老いをみるまなざし第66回 繭#健康身体 健康地球 健康生活#
井口 昭久(いぐち あきひさ)
愛知淑徳大学健康医療科学部教授
「繭一つ取り残された梁のうえ」
私が小学生の時に作った俳句である。
小学生の高学年の時だったような気がする。
学校の先生に褒められたわけではないが今でも覚えている。
家の中で飼われていた蚕は夏の間に天井の梁に登り糸を吐いて繭をつくった。
冬の夜に、その繭を私がみつけたのだ。
今では養蚕(ようさん)を営む農家はなくなってしまったが、昭和20-30年代の信州の主産業は養蚕であった。
その当時の長野県には信州大学に繊維学部があり日本を代表する製糸会社であった片倉製糸工業があった。
養蚕業は当時の農家にとって貴重な現金収入であったので、人々は蚕のことを「お蚕様」と呼んだ。
初夏から秋にかけて我が家の主人公は蚕であった。
どの部屋にも蚕のための棚がつくられて人間は蚕の間に布団を敷いて寝たものだ。
古い農家に大きな家が多いのは当時の養蚕の名残りである。
母は畑から桑の葉をとってきてお蚕様に与えた。
母の苦労を見ていた私は「蚕を畑で飼えばいいのに」と子供心に思ったものだ。
しかしこの原稿を書くにあたりYahoo!で"蚕"を調べてみると、蚕は絹を生産するために人間によって家畜化された昆虫であり、野生動物としては存在しないのだということが分かった。
野生回帰能力を失ってしまった唯一の家畜化動物であり、人間による管理なしでは生きることができないそうだ。
なにしろ5000年も前から人間に飼われてきた昆虫である。
完全に人間の所有物になってしまったのだ。
蚕を畑の桑の葉にとまらせても、餌の桑の葉を探さないまま餓死してしまうそうだ。
私は大人びた子供であった。子供心にそんな自分が嫌いであった。
大人に「気に入られよう」と媚びた行動をとり、それが大人の嫌悪感を誘発して更に嫌われるという悪循環に陥っていた。
私はその循環を自覚しており抜け出すために早く大人になりたかった。
天井に発見した繭から飛び立つ蝶のように青空に向かって飛び出したかった。
私が俳句を作ったのは冬の夜であった。
しんしんと雪の降る夜に、私は天井に繭を見つけたのだった。
冬の夜の雪は遥か彼方の夜の底から降ってきた。
朝になると、世界は繭のように真っ白に変わっていた。
田んぼも天竜川の土手も白い雪に覆われた白銀の世界であった。
世界が変わる予感に満ちていて、私はわけもなく嬉しかった。
お蚕様は梁の上の繭の中で蛹(サナギ)となり脱皮してほどなくして空中に飛び立っていったものと思っていた。
しかし今(2023年2月)Yahoo!で調べてみると、蛹から脱皮した成虫は蛾(ガ)となるのだが、翅(ハネ)はあるが羽ばたくことはできないことがわかった。体が大きいことや飛翔に必要な筋肉が退化していることが原因だそうだ。
私が見つけた梁の上のお蚕様は家から抜け出すことができずに天井から落下して死んでいたのであった。
図:老いをみるまなざし_第66回_繭_天井の梁に蚕が糸を吐いて作った繭を見上げる著者を表す図。
(イラスト:茶畑和也)
井口 昭久(いぐち あきひさ)
愛知淑徳大学健康医療科学部教授
「繭一つ取り残された梁のうえ」
私が小学生の時に作った俳句である。
小学生の高学年の時だったような気がする。
学校の先生に褒められたわけではないが今でも覚えている。
家の中で飼われていた蚕は夏の間に天井の梁に登り糸を吐いて繭をつくった。
冬の夜に、その繭を私がみつけたのだ。
今では養蚕(ようさん)を営む農家はなくなってしまったが、昭和20-30年代の信州の主産業は養蚕であった。
その当時の長野県には信州大学に繊維学部があり日本を代表する製糸会社であった片倉製糸工業があった。
養蚕業は当時の農家にとって貴重な現金収入であったので、人々は蚕のことを「お蚕様」と呼んだ。
初夏から秋にかけて我が家の主人公は蚕であった。
どの部屋にも蚕のための棚がつくられて人間は蚕の間に布団を敷いて寝たものだ。
古い農家に大きな家が多いのは当時の養蚕の名残りである。
母は畑から桑の葉をとってきてお蚕様に与えた。
母の苦労を見ていた私は「蚕を畑で飼えばいいのに」と子供心に思ったものだ。
しかしこの原稿を書くにあたりYahoo!で"蚕"を調べてみると、蚕は絹を生産するために人間によって家畜化された昆虫であり、野生動物としては存在しないのだということが分かった。
野生回帰能力を失ってしまった唯一の家畜化動物であり、人間による管理なしでは生きることができないそうだ。
なにしろ5000年も前から人間に飼われてきた昆虫である。
完全に人間の所有物になってしまったのだ。
蚕を畑の桑の葉にとまらせても、餌の桑の葉を探さないまま餓死してしまうそうだ。
私は大人びた子供であった。子供心にそんな自分が嫌いであった。
大人に「気に入られよう」と媚びた行動をとり、それが大人の嫌悪感を誘発して更に嫌われるという悪循環に陥っていた。
私はその循環を自覚しており抜け出すために早く大人になりたかった。
天井に発見した繭から飛び立つ蝶のように青空に向かって飛び出したかった。
私が俳句を作ったのは冬の夜であった。
しんしんと雪の降る夜に、私は天井に繭を見つけたのだった。
冬の夜の雪は遥か彼方の夜の底から降ってきた。
朝になると、世界は繭のように真っ白に変わっていた。
田んぼも天竜川の土手も白い雪に覆われた白銀の世界であった。
世界が変わる予感に満ちていて、私はわけもなく嬉しかった。
お蚕様は梁の上の繭の中で蛹(サナギ)となり脱皮してほどなくして空中に飛び立っていったものと思っていた。
しかし今(2023年2月)Yahoo!で調べてみると、蛹から脱皮した成虫は蛾(ガ)となるのだが、翅(ハネ)はあるが羽ばたくことはできないことがわかった。体が大きいことや飛翔に必要な筋肉が退化していることが原因だそうだ。
私が見つけた梁の上のお蚕様は家から抜け出すことができずに天井から落下して死んでいたのであった。
図:老いをみるまなざし_第66回_繭_天井の梁に蚕が糸を吐いて作った繭を見上げる著者を表す図。
(イラスト:茶畑和也)
#健康身体 健康地球 健康生活#
〔老いをみるまなざし〕
第64回 宅配ボックス
井口 昭久(いぐち あきひさ)
愛知淑徳大学健康医療科学部教授
年末になるとお歳暮が送られてくる。
郵便受けに「荷物を宅配ボックスに入れておきました」と宅配の人の手紙が入れてあった。
我が家をこの地に建ててから20年以上は経つが、そのボックスを使ったことはなかった。
宅配ボックスは玄関から離れた場所で駐車場の隣にあるので存在に気がつく配達業者は今まではいなかったのだ。
玄関は2階にあり、駐車場が1階にある。
家人すらその存在を忘れていたボックスへ配達物を投入していった宅配の人はどんな人なのだろう?
こんなことをする人は老人に違いないと何故か確信した。
私は玄関を出て階段を下りて、宅配ボックスを開けようとしたが、開かなかった。鍵が必要であったのだ。
厄介なことをしていった宅配の人を私は憎らしく思った。
家の中に戻って長い間使ったことはなかった、在るか無いか分からない鍵を苦労して探し出して、鍵穴に挿した。
鍵は思いのほか簡単に回った。
しかしボックスの扉は開かなかった。
開かずのボックスに入っている荷物は誰からの物か?
送り主は私から着いたという返事を待っている筈だ。
お礼の返事を早く出さねばならぬが誰に出せばいいんだ。
私は宅配の爺さんを恨んだ。
開かないこのボックスにどうやって荷物を入れたのか?
私はそのからくりを知りたかった。
宅配の爺さんの再来を待っていた。
次の日に事件の主犯が新たなお歳暮を持ってやってきた。
私の想像とは異なり若いお兄ちゃんであった。
「どうやって開けたのだ?!」と詰問すると、「開いていたので入れておきました」と平然と言うではないか。
彼は事件の真相を理解できていないようであったので、彼の前で開扉を試みて見せた。
私がおもむろに鍵を鍵穴に差し込んで回し、取手を持って引っ張ったが扉は動じなかった。
私は「こういうことなんだよ。分かったか!」
と勝ち誇ったような顔になったに違いなかった。
しかしお兄ちゃんは不審そうな表情を崩さなかった。
「じゃー自分で開けてごらんよ」という私の誘導に、彼が錆びた扉をつかんで引っ張ると開いた。
錆びたボックスの扉を開けるにはある閾値を超えた力が必要であったのだ。
古くなった鍵は無効になっていた。
私の力が足りなかったのが真相であった。
私は毎朝、外来の始まる前に、診療所にある自動販売機でペットボトルに入ったお茶を買う。
私の指の力では開かない蓋を看護師に開けてもらう。
彼女たちは平然と開けてくれる。
それと同じ原理であったのだ。
ペットボトルは力を出せば開くことが分かっているが、この宅配ボックスは力を入れれば開くという事実を私が知らなかった。
それにしても人間は思わぬことで、見も知らぬ人を憎んだり恨んだりするものだ。
図:老いをみるまなざし_第64回_宅配ボックス_自宅の宅配ボックスに荷物を取りに行く様子を表わす図。
(イラスト:茶畑和也)
〔老いをみるまなざし〕
第64回 宅配ボックス
井口 昭久(いぐち あきひさ)
愛知淑徳大学健康医療科学部教授
年末になるとお歳暮が送られてくる。
郵便受けに「荷物を宅配ボックスに入れておきました」と宅配の人の手紙が入れてあった。
我が家をこの地に建ててから20年以上は経つが、そのボックスを使ったことはなかった。
宅配ボックスは玄関から離れた場所で駐車場の隣にあるので存在に気がつく配達業者は今まではいなかったのだ。
玄関は2階にあり、駐車場が1階にある。
家人すらその存在を忘れていたボックスへ配達物を投入していった宅配の人はどんな人なのだろう?
こんなことをする人は老人に違いないと何故か確信した。
私は玄関を出て階段を下りて、宅配ボックスを開けようとしたが、開かなかった。鍵が必要であったのだ。
厄介なことをしていった宅配の人を私は憎らしく思った。
家の中に戻って長い間使ったことはなかった、在るか無いか分からない鍵を苦労して探し出して、鍵穴に挿した。
鍵は思いのほか簡単に回った。
しかしボックスの扉は開かなかった。
開かずのボックスに入っている荷物は誰からの物か?
送り主は私から着いたという返事を待っている筈だ。
お礼の返事を早く出さねばならぬが誰に出せばいいんだ。
私は宅配の爺さんを恨んだ。
開かないこのボックスにどうやって荷物を入れたのか?
私はそのからくりを知りたかった。
宅配の爺さんの再来を待っていた。
次の日に事件の主犯が新たなお歳暮を持ってやってきた。
私の想像とは異なり若いお兄ちゃんであった。
「どうやって開けたのだ?!」と詰問すると、「開いていたので入れておきました」と平然と言うではないか。
彼は事件の真相を理解できていないようであったので、彼の前で開扉を試みて見せた。
私がおもむろに鍵を鍵穴に差し込んで回し、取手を持って引っ張ったが扉は動じなかった。
私は「こういうことなんだよ。分かったか!」
と勝ち誇ったような顔になったに違いなかった。
しかしお兄ちゃんは不審そうな表情を崩さなかった。
「じゃー自分で開けてごらんよ」という私の誘導に、彼が錆びた扉をつかんで引っ張ると開いた。
錆びたボックスの扉を開けるにはある閾値を超えた力が必要であったのだ。
古くなった鍵は無効になっていた。
私の力が足りなかったのが真相であった。
私は毎朝、外来の始まる前に、診療所にある自動販売機でペットボトルに入ったお茶を買う。
私の指の力では開かない蓋を看護師に開けてもらう。
彼女たちは平然と開けてくれる。
それと同じ原理であったのだ。
ペットボトルは力を出せば開くことが分かっているが、この宅配ボックスは力を入れれば開くという事実を私が知らなかった。
それにしても人間は思わぬことで、見も知らぬ人を憎んだり恨んだりするものだ。
図:老いをみるまなざし_第64回_宅配ボックス_自宅の宅配ボックスに荷物を取りに行く様子を表わす図。
(イラスト:茶畑和也)
櫻井翔「今のうちに標本にして」 “バディ”を組んだ広瀬すずとの意外な共通点
https://t.cn/A6N0WMEX
公開中の「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」で3度目の共演だという櫻井翔と広瀬すず。お互いの共通点や大切にしていることについて語り合った。AERA 2023年4月10日号より紹介する。
――初共演は映画「ラプラスの魔女」。ドラマ「ネメシス」を経て、「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」で3度目の共演となる。
広瀬:映画のクランクインの初日から、「昨日も撮影してたかな?」と思うぐらい、皆さんの馴染み方がすごかった(笑)。すごく安心感がありました。
櫻井:会っていなかった時間が気にならないくらいの仲間感があったのが面白かった。僕はそんなに頻繁(ひんぱん)にお芝居の仕事をいただいているわけではないんですが、それを考えると僕の出演作は割合的にほぼ“広瀬すず”なんです(笑)。紅白の司会もご一緒させていただいた。こんなに定期的に会っている女優さんは他にいません。
■アスリートに通じる
――バディを組む上で、広瀬からはどんなポジティブな影響をもらっているのだろうか。
櫻井:ふたつあります。何度もご一緒しているからこそ、オフの時間もごく自然に過ごせるのがひとつ。もうひとつは、すずちゃんの鍛錬するようにお芝居に向かう姿勢はアスリートに通じるものがある。その姿を近くで見られるのは刺激になります。
広瀬:「アスリートっぽいね」とはよく言われます。頭で考えるよりは、心と体を先に動かすことが好きなタイプなのでそう見えるのかもしれません。
櫻井:今回改めてすずちゃんの身体能力のすごさを感じたのが、長尺のアクションシーン。踊りにも通じるものがあるんですが、尺が長い分覚えることが多いにもかかわらず、集中力を一切切らさずに向き合っていた。
広瀬:映画では、翔さんが演じる風真さんのシリアスな表情のシーンがありました。翔さんのお芝居を見ながら、「自分だったらどう演じるんだろう。普段の感じと変えすぎると、観てくれる方は冷めちゃうだろうな」と考えていたんですが、翔さんは段取りの段階からちょっとした心の距離感を自然と表現されていて、すごいなと思いました。
櫻井:風真のその表情は、佐藤浩市さんが演じる謎の男の存在が鍵になっています。撮影現場で浩市さんのことを観察して取り入れたいエッセンスを膨らませていきました。
――ふたりの間には、終始和やかな雰囲気が漂う。
広瀬:「ラプラスの魔女」の撮影のときから、割とすぐに喋っていましたよね。
櫻井:うん、喋ってたね。序盤に雪山での撮影があって、バスの中で長時間ふたりで雪が止むのを待ったことがあったよね。ほぼ初めましての状態で。
広瀬:そうでした(笑)。
櫻井:そのときから、変な緊張感はなかったよね。キャンペーンもあったから、一緒にいる時間が多かったし。
広瀬:そうですね。撮影現場で私が「体を動かそう」と言って、スタッフさんにご迷惑をかけるくらい翔さんを汗だくにさせてしまったこともありました(笑)。
変わらないから心強い
櫻井:いやいや、あれは俺の問題だよ(笑)。
広瀬:私は人見知りなので、お仕事の先輩で最初からナチュラルに接することができる方はなかなかいないです。翔さんはいつも飾らないでいてくださるから、ありがたい。気持ちの良い方だなと思います。
櫻井:遡(さかのぼ)ると、最初に会ったのは「VS嵐」に「海街diary」の番宣で来てくれたときだよね。
広瀬:そうです。私が16歳くらいのときですね。
櫻井:そこから何年か空いて「ラプラス」で共演させてもらってからは、すずちゃんの印象は変わらないですね。変わらないのがすごいとも思います。
広瀬:でも、私からしたら誰よりも最初と印象が変わらないのが翔さんです。人類の中でもっとも変わらないくらい(笑)。
櫻井:今のうちに標本にしてほしいわ(笑)。
広瀬:(笑)。全く変わらないからこそ、すごく心強い。だから私も安定したテンションでいろいろなことができるんだと思います。ただ、不意に風真さんのような少し抜けているところが出てくるんです。そこがたまらなく好きです。
櫻井:自分ではわからない(笑)。
広瀬:定期的にご一緒していることもあって、お会いするとまず近況報告をしてくださるんです。その話がすごく面白いと同時に、「ああ、翔さんも同じ人間なんだな」って思います。それこそ子どもの時からテレビで観ていた方ですから。
――二人とも、ミドルティーンの頃から芸能界で活躍し続けている。ともに“普通であること”を大切にしているという。
櫻井:実践できているかは別として、意識はしています。芸能のお仕事をしていると、自分では普通に過ごしているつもりでも、いつの間にかずれてしまうのが怖いんですよね。長くお仕事をさせていただくほどそう思う。すずちゃんには近しい感覚があります。だから、落ち着くのかもしれない。地方で映画「ネメシス」の撮影をした際にごはんを食べに行ったら、あとからすずちゃんが衣装のまま現れたんです。
広瀬:翔さんが店内にいることに気付いて外から視線を送っていたんですが、お肉に夢中で全然気づいてもらえなくて(笑)。あまりにも普通に食事をしている姿に驚きました。
櫻井:(笑)。こっちこそ、すずちゃんがすごくナチュラルに現れたので感動したよ。
――4度目の共演をするとしたら、どんな役を演じたいのだろうか。
広瀬:(挙手をして)はい!
櫻井:早っ!(笑)
広瀬:「ラプラス」も「ネメシス」も私が演じたのが遺伝子操作を施されてちょっとした特殊能力を持っている役だったので、人間の役で共演したいです! 次は人間がいい(笑)。
櫻井:“人間がいい”(笑)。なかなか言えないセリフだよ。
広瀬:そういう役を演じることもなかなかないのに、翔さんと一緒のときはなぜかそうなんですよね。
櫻井:確かに。でも、またもやすずちゃんが人間じゃない「3部作」になるかもね(笑)。
(構成/ライター・小松香里)
※AERA 2023年4月10日号
#arashi##sho##2023##interview##movie##nemesis#
arashi, sho, 2023, interview, movie, nemesis
https://t.cn/A6N0WMEX
公開中の「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」で3度目の共演だという櫻井翔と広瀬すず。お互いの共通点や大切にしていることについて語り合った。AERA 2023年4月10日号より紹介する。
――初共演は映画「ラプラスの魔女」。ドラマ「ネメシス」を経て、「映画 ネメシス 黄金螺旋の謎」で3度目の共演となる。
広瀬:映画のクランクインの初日から、「昨日も撮影してたかな?」と思うぐらい、皆さんの馴染み方がすごかった(笑)。すごく安心感がありました。
櫻井:会っていなかった時間が気にならないくらいの仲間感があったのが面白かった。僕はそんなに頻繁(ひんぱん)にお芝居の仕事をいただいているわけではないんですが、それを考えると僕の出演作は割合的にほぼ“広瀬すず”なんです(笑)。紅白の司会もご一緒させていただいた。こんなに定期的に会っている女優さんは他にいません。
■アスリートに通じる
――バディを組む上で、広瀬からはどんなポジティブな影響をもらっているのだろうか。
櫻井:ふたつあります。何度もご一緒しているからこそ、オフの時間もごく自然に過ごせるのがひとつ。もうひとつは、すずちゃんの鍛錬するようにお芝居に向かう姿勢はアスリートに通じるものがある。その姿を近くで見られるのは刺激になります。
広瀬:「アスリートっぽいね」とはよく言われます。頭で考えるよりは、心と体を先に動かすことが好きなタイプなのでそう見えるのかもしれません。
櫻井:今回改めてすずちゃんの身体能力のすごさを感じたのが、長尺のアクションシーン。踊りにも通じるものがあるんですが、尺が長い分覚えることが多いにもかかわらず、集中力を一切切らさずに向き合っていた。
広瀬:映画では、翔さんが演じる風真さんのシリアスな表情のシーンがありました。翔さんのお芝居を見ながら、「自分だったらどう演じるんだろう。普段の感じと変えすぎると、観てくれる方は冷めちゃうだろうな」と考えていたんですが、翔さんは段取りの段階からちょっとした心の距離感を自然と表現されていて、すごいなと思いました。
櫻井:風真のその表情は、佐藤浩市さんが演じる謎の男の存在が鍵になっています。撮影現場で浩市さんのことを観察して取り入れたいエッセンスを膨らませていきました。
――ふたりの間には、終始和やかな雰囲気が漂う。
広瀬:「ラプラスの魔女」の撮影のときから、割とすぐに喋っていましたよね。
櫻井:うん、喋ってたね。序盤に雪山での撮影があって、バスの中で長時間ふたりで雪が止むのを待ったことがあったよね。ほぼ初めましての状態で。
広瀬:そうでした(笑)。
櫻井:そのときから、変な緊張感はなかったよね。キャンペーンもあったから、一緒にいる時間が多かったし。
広瀬:そうですね。撮影現場で私が「体を動かそう」と言って、スタッフさんにご迷惑をかけるくらい翔さんを汗だくにさせてしまったこともありました(笑)。
変わらないから心強い
櫻井:いやいや、あれは俺の問題だよ(笑)。
広瀬:私は人見知りなので、お仕事の先輩で最初からナチュラルに接することができる方はなかなかいないです。翔さんはいつも飾らないでいてくださるから、ありがたい。気持ちの良い方だなと思います。
櫻井:遡(さかのぼ)ると、最初に会ったのは「VS嵐」に「海街diary」の番宣で来てくれたときだよね。
広瀬:そうです。私が16歳くらいのときですね。
櫻井:そこから何年か空いて「ラプラス」で共演させてもらってからは、すずちゃんの印象は変わらないですね。変わらないのがすごいとも思います。
広瀬:でも、私からしたら誰よりも最初と印象が変わらないのが翔さんです。人類の中でもっとも変わらないくらい(笑)。
櫻井:今のうちに標本にしてほしいわ(笑)。
広瀬:(笑)。全く変わらないからこそ、すごく心強い。だから私も安定したテンションでいろいろなことができるんだと思います。ただ、不意に風真さんのような少し抜けているところが出てくるんです。そこがたまらなく好きです。
櫻井:自分ではわからない(笑)。
広瀬:定期的にご一緒していることもあって、お会いするとまず近況報告をしてくださるんです。その話がすごく面白いと同時に、「ああ、翔さんも同じ人間なんだな」って思います。それこそ子どもの時からテレビで観ていた方ですから。
――二人とも、ミドルティーンの頃から芸能界で活躍し続けている。ともに“普通であること”を大切にしているという。
櫻井:実践できているかは別として、意識はしています。芸能のお仕事をしていると、自分では普通に過ごしているつもりでも、いつの間にかずれてしまうのが怖いんですよね。長くお仕事をさせていただくほどそう思う。すずちゃんには近しい感覚があります。だから、落ち着くのかもしれない。地方で映画「ネメシス」の撮影をした際にごはんを食べに行ったら、あとからすずちゃんが衣装のまま現れたんです。
広瀬:翔さんが店内にいることに気付いて外から視線を送っていたんですが、お肉に夢中で全然気づいてもらえなくて(笑)。あまりにも普通に食事をしている姿に驚きました。
櫻井:(笑)。こっちこそ、すずちゃんがすごくナチュラルに現れたので感動したよ。
――4度目の共演をするとしたら、どんな役を演じたいのだろうか。
広瀬:(挙手をして)はい!
櫻井:早っ!(笑)
広瀬:「ラプラス」も「ネメシス」も私が演じたのが遺伝子操作を施されてちょっとした特殊能力を持っている役だったので、人間の役で共演したいです! 次は人間がいい(笑)。
櫻井:“人間がいい”(笑)。なかなか言えないセリフだよ。
広瀬:そういう役を演じることもなかなかないのに、翔さんと一緒のときはなぜかそうなんですよね。
櫻井:確かに。でも、またもやすずちゃんが人間じゃない「3部作」になるかもね(笑)。
(構成/ライター・小松香里)
※AERA 2023年4月10日号
#arashi##sho##2023##interview##movie##nemesis#
arashi, sho, 2023, interview, movie, nemesis
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