【栗東便り】現役続行メロディーレーンは8歳にしてまだ成長中!? 森田師「あんな馬いない」
小さくてかわいい“ちいかわ”メロディーレーン(牝8、森田)は、競馬界屈指の人気者だ。写真集やカレンダーも発売され、SNSに動画を投稿すると何千もの「いいね」がつく。
そんなアイドルホースが先週6日、進退をかけたレースに臨んだ。
5歳秋の古都Sを最後に2年以上も勝利から遠ざかったまま8歳を迎えていた。昨年は4戦して1度も掲示板に載れていなかった。年末には2歳下の半弟タイトルホルダーも引退したばかりだった。
そうした中で挑んだ今年初戦の万葉S。馬群に入ると見えなくなりそうな358キロの体を目いっぱいに伸ばして、3着に食い込んだ。SNSでは「感動しました」などと称賛する声が相次いだ。
森田直行調教師(62)が驚いたのは、激走直後の愛馬の様子だ。
「今までで一番、息があがってなかった。3000メートルを走ったのに、坂路(800メートル)を上がった後ぐらい、しんどくなさそうやった。あんな馬はいない。衰えるどころか、まだまだ成長しているのかも」
僕(太田)もちょうどレース後の検量室前で動画を撮っていたが、たしかに呼吸は乱れていなかった。興奮気味に首を振っていたのは走り足りなかったから…とみるのは思い過ごしかもしれないが。
そんなレース内容を踏まえ、現役続行が決まった。次走は阪神大賞典(G2、芝3000メートル、3月17日)と発表された。いつ引退してもおかしくない年齢だが、森田師は「(オーナーの)岡田牧雄さんも『ファンが喜んでくれるなら走らせたい』とおっしゃっていた。体の張りも良かったし、8歳ながらトモの筋肉もすごかった」と充実ぶりを証言する。
ちなみに、年始の3日間開催に出走した1077頭の平均体重は477・6キロだった。それより100キロ以上も小さな馬体で、8歳にして一線級を相手に戦う。もはや常識を超越している。
同じく型破りだった父オルフェーヴルを番記者として取材しただけに、個人的にも目が離せない存在だ。まず何よりも無事を願いつつ、今なお成長中という走りをこれからも見守っていきたい。【太田尚樹】
小さくてかわいい“ちいかわ”メロディーレーン(牝8、森田)は、競馬界屈指の人気者だ。写真集やカレンダーも発売され、SNSに動画を投稿すると何千もの「いいね」がつく。
そんなアイドルホースが先週6日、進退をかけたレースに臨んだ。
5歳秋の古都Sを最後に2年以上も勝利から遠ざかったまま8歳を迎えていた。昨年は4戦して1度も掲示板に載れていなかった。年末には2歳下の半弟タイトルホルダーも引退したばかりだった。
そうした中で挑んだ今年初戦の万葉S。馬群に入ると見えなくなりそうな358キロの体を目いっぱいに伸ばして、3着に食い込んだ。SNSでは「感動しました」などと称賛する声が相次いだ。
森田直行調教師(62)が驚いたのは、激走直後の愛馬の様子だ。
「今までで一番、息があがってなかった。3000メートルを走ったのに、坂路(800メートル)を上がった後ぐらい、しんどくなさそうやった。あんな馬はいない。衰えるどころか、まだまだ成長しているのかも」
僕(太田)もちょうどレース後の検量室前で動画を撮っていたが、たしかに呼吸は乱れていなかった。興奮気味に首を振っていたのは走り足りなかったから…とみるのは思い過ごしかもしれないが。
そんなレース内容を踏まえ、現役続行が決まった。次走は阪神大賞典(G2、芝3000メートル、3月17日)と発表された。いつ引退してもおかしくない年齢だが、森田師は「(オーナーの)岡田牧雄さんも『ファンが喜んでくれるなら走らせたい』とおっしゃっていた。体の張りも良かったし、8歳ながらトモの筋肉もすごかった」と充実ぶりを証言する。
ちなみに、年始の3日間開催に出走した1077頭の平均体重は477・6キロだった。それより100キロ以上も小さな馬体で、8歳にして一線級を相手に戦う。もはや常識を超越している。
同じく型破りだった父オルフェーヴルを番記者として取材しただけに、個人的にも目が離せない存在だ。まず何よりも無事を願いつつ、今なお成長中という走りをこれからも見守っていきたい。【太田尚樹】
「Number_i」、デビュー曲「GOAT」を元日にリリース 平野紫耀「めでたい日がデビュー記念日になるなって」
平野紫耀(26)、神宮寺勇太(26)、岸優太(28)によるダンス&ボーカルグループ「Number_i(ナンバーアイ)」がデビュー曲となる配信シングル「GOAT(ゴート)」を元日午前0時にリリースした。滝沢秀明さんが立ち上げた芸能事務所「TOBE」に移籍後、満を持してファンに初めて届ける同曲は「King & Prince」(通称キンプリ)時代のイメージを覆すゴリゴリのヒップホップソング。3人は本紙などの取材に応じ、楽曲へのこだわりや現在の心境を語った。(江川悠)
「GOAT」は「Greatest Of All Time」の頭文字を取ったスラングで、「史上最高」という意味。昨年10月15日のグループ始動からわずか2カ月半にして、この楽曲が完全に最高到達点であることを宣言する全編ラップのナンバーに仕上がった。リリース日は元日。2024年の始まりと同時に、この楽曲が全世界に向けて配信される。
平野「めでたい日がデビュー記念日になるなって。毎年、年が明けるとともにその記念日が訪れるのは素晴らしいことだなと思います」
デビュー曲は、アイドル色を一切排除。クールでいて攻撃的でもあり、これまで見せたことのない3人の新たな魅力をぎっしり詰め込んだ。
神宮寺「せっかくだったら日本のアーティストの方々があまり最近やってないような、ゴリゴリのヒップホップというジャンル、そしてそのカルチャーを自分たちなりに表現したいよねっていうことで、このような楽曲にさせていただきました」
デモ楽曲をベースに、まずは誰がどのパートにふさわしいかを検証し、作曲家を交えて意見を出し合って自分たちの気持ちを詞に乗せていった。約2カ月をかけて完成したときには、デモが原形をとどめないほどブラッシュアップされていたという。
平野「制作期間が長かったからこそ、ゆえのワクワク感は高まってもらえているのかな。やっぱり、どういうのを出すんだろうっていういろんな『?』が浮かんでいる方たちも多いと思うので、そこにふさわしいような1曲目が僕たち自身もできたという実感がすごくある。そこはお互いWIN×WINなリアクションになるんじゃないかと思います」
神宮寺「皆さん、たくさん待っていてくれているので、こうして3人からのプレゼントではないですけど、お年玉的なものを与えられることがすごいうれしいですし、早く1月1日にならないかなってずっと思っていたぐらい楽しみにしています」
岸「レコーディングに関しても、すごい朝まで録ったという思い出があります。それくらい納得いくまで作り上げた、魂と時間を込めた1曲。すごい自分たちも愛する作品ですね」
3月14~17日には東京ドームでTOBE所属タレントが一堂に会するコンサート「to HEROes~TOBE 1st Super Live~」が開催される。このデビュー曲が名刺代わりとなりそうだ。ただ、キンプリを脱退し、新たなグループから楽曲をリリースすることに賛否両論があるのは3人とも重々承知している。
神宮寺「エンターテインメント、楽曲、パフォーマンスを通して、みなさんにより楽しい日常を送っていただけるために僕たちのエンターテインメントは存在すると思う。喜んでいただいている声もありますし、複雑な皆さまもいると思うんですけども、本当に皆さんひっくるめて今後も楽しませていきたいなと思っています」
3人が目指す海外進出の夢―。まだスタート地点に立ったばかりだが、確実に最初の一歩は踏み出した。
岸「その思いは本当に変わってないですし、より熱くなっているという感じが強いですね。でも国を問わず、たくさんの方々に愛してもらえることがまず第一ですし、僕たちを一番大切にしてくださっている日本のファンはずっと大切にして、一緒に(海外に)行きたいなという感じです」
そして、今年はNumber_iとしての単独ツアーにも期待がかかる。
平野「とにかく楽しんで、そして挑戦して、充実できたらなと思います。そして、リリースまでお待たせしてしまったということもあるので、ライブでもやって、みなさんに会える機会があればいいなと思っています。僕から見ても、岸くん、神宮寺の魅力はすごくありますし、逆に紹介しにいきたいぐらいなので。たくさんの人たちに僕たちの魅力というか、楽しんで楽曲をやってる姿を見ていただけたら」
ファンの期待を背負いながら、3人はGOATな未来の地図を描いていく。
滝沢秀明さん、Number_iデビュー曲は「グローバルに挑戦できるような楽曲にしたいという本人たちの意向を反映」
平野紫耀(26)、神宮寺勇太(26)、岸優太(28)によるダンス&ボーカルグループ「Number_i(ナンバーアイ)」がデビュー曲となる配信シングル「GOAT(ゴート)」を元日午前0時にリリースした。滝沢秀明さんが立ち上げた芸能事務所「TOBE」に移籍後、満を持してファンに初めて届ける同曲は「King & Prince」(通称キンプリ)時代のイメージを覆すゴリゴリのヒップホップソング。3人は本紙などの取材に応じ、楽曲へのこだわりや現在の心境を語った。(江川悠)
◇「日本語詞で日本代表としてチャレンジ」
○…デビュー曲をプロデュースした滝沢さんも取材に応じ、新年とともに世に放たれるNumber_iの1作目について「今までアイドル的な存在で活動していたが、デビュー曲に関しては、グローバルに挑戦できるような楽曲にしたいという本人たちの意向を反映させています」と説明。その上で「今回は日本語詞で日本代表としてチャレンジしているというメッセージを海外に届けたいという狙いがあります」と補足した。
また「今まで応援してきたファンの方が聴いたら、けっこう衝撃的な、とがってる楽曲になると思うんですが、『自分たちのこれからを皆さんに示す』という意味ではNumber_iの覚悟を乗せた楽曲になるかと思います。まずは自分たちはこういった楽曲で『世界に挑戦していきたいんだ』っていう熱い気持ちが乗った楽曲になります」とアピールした。
◇MVをグループのYouTubeチャンネルで公開
○…「GOAT」の配信と同時に、同曲のミュージックビデオ(MV)もグループの公式YouTubeチャンネルで公開される。
東京と栃木で3日間撮影。椎名林檎や東京事変のMVも手がける児玉裕一監督は「Number_iの3人、コレオグラファーさん、スタイリストさんと何度も顔を合わせながら、みんなで少しずつイメージを膨らませていきました。これが彼らの答え。そして彼らの新しいやり方。これまでもこれからもすべてひっくるめて堂々と前に進んでいく、そんな覚悟とすがすがしさと可能性があふれちゃってはみ出しちゃって、とても映像には収まりきってません…。Number_iやばい…」とコメントを寄せた。
平野紫耀(26)、神宮寺勇太(26)、岸優太(28)によるダンス&ボーカルグループ「Number_i(ナンバーアイ)」がデビュー曲となる配信シングル「GOAT(ゴート)」を元日午前0時にリリースした。滝沢秀明さんが立ち上げた芸能事務所「TOBE」に移籍後、満を持してファンに初めて届ける同曲は「King & Prince」(通称キンプリ)時代のイメージを覆すゴリゴリのヒップホップソング。3人は本紙などの取材に応じ、楽曲へのこだわりや現在の心境を語った。(江川悠)
「GOAT」は「Greatest Of All Time」の頭文字を取ったスラングで、「史上最高」という意味。昨年10月15日のグループ始動からわずか2カ月半にして、この楽曲が完全に最高到達点であることを宣言する全編ラップのナンバーに仕上がった。リリース日は元日。2024年の始まりと同時に、この楽曲が全世界に向けて配信される。
平野「めでたい日がデビュー記念日になるなって。毎年、年が明けるとともにその記念日が訪れるのは素晴らしいことだなと思います」
デビュー曲は、アイドル色を一切排除。クールでいて攻撃的でもあり、これまで見せたことのない3人の新たな魅力をぎっしり詰め込んだ。
神宮寺「せっかくだったら日本のアーティストの方々があまり最近やってないような、ゴリゴリのヒップホップというジャンル、そしてそのカルチャーを自分たちなりに表現したいよねっていうことで、このような楽曲にさせていただきました」
デモ楽曲をベースに、まずは誰がどのパートにふさわしいかを検証し、作曲家を交えて意見を出し合って自分たちの気持ちを詞に乗せていった。約2カ月をかけて完成したときには、デモが原形をとどめないほどブラッシュアップされていたという。
平野「制作期間が長かったからこそ、ゆえのワクワク感は高まってもらえているのかな。やっぱり、どういうのを出すんだろうっていういろんな『?』が浮かんでいる方たちも多いと思うので、そこにふさわしいような1曲目が僕たち自身もできたという実感がすごくある。そこはお互いWIN×WINなリアクションになるんじゃないかと思います」
神宮寺「皆さん、たくさん待っていてくれているので、こうして3人からのプレゼントではないですけど、お年玉的なものを与えられることがすごいうれしいですし、早く1月1日にならないかなってずっと思っていたぐらい楽しみにしています」
岸「レコーディングに関しても、すごい朝まで録ったという思い出があります。それくらい納得いくまで作り上げた、魂と時間を込めた1曲。すごい自分たちも愛する作品ですね」
3月14~17日には東京ドームでTOBE所属タレントが一堂に会するコンサート「to HEROes~TOBE 1st Super Live~」が開催される。このデビュー曲が名刺代わりとなりそうだ。ただ、キンプリを脱退し、新たなグループから楽曲をリリースすることに賛否両論があるのは3人とも重々承知している。
神宮寺「エンターテインメント、楽曲、パフォーマンスを通して、みなさんにより楽しい日常を送っていただけるために僕たちのエンターテインメントは存在すると思う。喜んでいただいている声もありますし、複雑な皆さまもいると思うんですけども、本当に皆さんひっくるめて今後も楽しませていきたいなと思っています」
3人が目指す海外進出の夢―。まだスタート地点に立ったばかりだが、確実に最初の一歩は踏み出した。
岸「その思いは本当に変わってないですし、より熱くなっているという感じが強いですね。でも国を問わず、たくさんの方々に愛してもらえることがまず第一ですし、僕たちを一番大切にしてくださっている日本のファンはずっと大切にして、一緒に(海外に)行きたいなという感じです」
そして、今年はNumber_iとしての単独ツアーにも期待がかかる。
平野「とにかく楽しんで、そして挑戦して、充実できたらなと思います。そして、リリースまでお待たせしてしまったということもあるので、ライブでもやって、みなさんに会える機会があればいいなと思っています。僕から見ても、岸くん、神宮寺の魅力はすごくありますし、逆に紹介しにいきたいぐらいなので。たくさんの人たちに僕たちの魅力というか、楽しんで楽曲をやってる姿を見ていただけたら」
ファンの期待を背負いながら、3人はGOATな未来の地図を描いていく。
滝沢秀明さん、Number_iデビュー曲は「グローバルに挑戦できるような楽曲にしたいという本人たちの意向を反映」
平野紫耀(26)、神宮寺勇太(26)、岸優太(28)によるダンス&ボーカルグループ「Number_i(ナンバーアイ)」がデビュー曲となる配信シングル「GOAT(ゴート)」を元日午前0時にリリースした。滝沢秀明さんが立ち上げた芸能事務所「TOBE」に移籍後、満を持してファンに初めて届ける同曲は「King & Prince」(通称キンプリ)時代のイメージを覆すゴリゴリのヒップホップソング。3人は本紙などの取材に応じ、楽曲へのこだわりや現在の心境を語った。(江川悠)
◇「日本語詞で日本代表としてチャレンジ」
○…デビュー曲をプロデュースした滝沢さんも取材に応じ、新年とともに世に放たれるNumber_iの1作目について「今までアイドル的な存在で活動していたが、デビュー曲に関しては、グローバルに挑戦できるような楽曲にしたいという本人たちの意向を反映させています」と説明。その上で「今回は日本語詞で日本代表としてチャレンジしているというメッセージを海外に届けたいという狙いがあります」と補足した。
また「今まで応援してきたファンの方が聴いたら、けっこう衝撃的な、とがってる楽曲になると思うんですが、『自分たちのこれからを皆さんに示す』という意味ではNumber_iの覚悟を乗せた楽曲になるかと思います。まずは自分たちはこういった楽曲で『世界に挑戦していきたいんだ』っていう熱い気持ちが乗った楽曲になります」とアピールした。
◇MVをグループのYouTubeチャンネルで公開
○…「GOAT」の配信と同時に、同曲のミュージックビデオ(MV)もグループの公式YouTubeチャンネルで公開される。
東京と栃木で3日間撮影。椎名林檎や東京事変のMVも手がける児玉裕一監督は「Number_iの3人、コレオグラファーさん、スタイリストさんと何度も顔を合わせながら、みんなで少しずつイメージを膨らませていきました。これが彼らの答え。そして彼らの新しいやり方。これまでもこれからもすべてひっくるめて堂々と前に進んでいく、そんな覚悟とすがすがしさと可能性があふれちゃってはみ出しちゃって、とても映像には収まりきってません…。Number_iやばい…」とコメントを寄せた。
231222 日経 更新福山相关
ミュージシャン、俳優、写真家……。デビュー以来30年あまり、多彩な顔を持ち、時代を代表するアーティストとして福山雅治さんは疾走してきた。心を動かす言葉と旋律は純粋であるばかりではない自己と厳しく向き合うことによって、紡がれているらしい。
長崎から、音楽活動のために上京した18歳当時を、苦笑まじりに振り返る。
「(高校を出て)5カ月間就職したけれど『井の中の蛙(かわず)大海を知らず』のままで10代、20代を過ごすのも嫌だな、と。ロックバンドを組みたくて考えたのが、新宿のピザ屋さんのアルバイト。35年くらい前、ピザのデリバリーがはやっていて、最先端のアルバイト先なら、文化的に感度の高いやつが集まって来るはずだ、と思って」
感受性が強く、音楽活動に興味を持つ仲間もいるにはいたが、結局はみんな夢だけ、みたいな素人の甘さがあり「ハモれなかった」。うだつのあがらない日々の転機は、芸能事務所アミューズの映画俳優オーディションに合格したことだった。この時の「偶然」が、すでに伝説の一つとなっている。
「偶然」と「好意」が重なり、映画俳優への道を開く
最終面接の通知が、手違いで東京都昭島市のアパートに届かず、落ちたと思い、ドライブにでかけた。ところが車のマフラーが腐食していたらしく、横田基地の辺りではずれて爆音になった。「こりゃいかんと、マフラーを拾ってアパートに戻り、車の下にもぐっていたところに、自転車に乗った配達の方が、電報届いていますよ、とやってきたわけです」。今すぐ来て、という事務所からの連絡だった。
当時9万5千円で買った中古の「いすゞジェミニZZ/R」のマフラーが、もし落ちていなかったら……。
「『タラレバ』でいえば、いろんなことはあったでしょう。今とは違う仕事をしていた可能性もあるし。でも1回は(音楽活動を)形にしようという頑張りや、あがきはしていたはず」
運、不運にかかわらず、やがては芽吹くはずの才能だったのだろうが、周囲の好意が、希代のアーティスト誕生にあずかっていたのは確からしい。
ピザ屋を辞めた後に勤めた材木店の家族は、ご飯を食べさせ、風呂に入れてくれ、クリスマスのケーキを持たせてくれた。アミューズの担当者は、審査に来ない青年に電報を出して呼び寄せた。とにかく人にかわいがられる。
「(かわいがられる)才能やすべがあったかどうかは、当時も今もよくわからないけれど、人にかわいがられたい、とは思っているし、そう思うことは大事なんじゃないか、と。老若男女問わず、好かれるって嫌な気持ちはしません。だから僕のなかでも、好きになってもらいたかったら(自分が)まず好きになること、と決めているところがある」
オーディションに合格してからの活躍は周知の通りだが、作った歌がすぐに売れたわけではなかった。
「とにかくヒットしている楽曲を、自分なりに因数分解してみました。自分が好きかどうかとか、自分はこの曲しかやりたくないとか、自分から出てくる音楽はこれだとか、自分らしさとはこうだ、とかは全部二の次にして、ヒットチャートに入っている楽曲のコードをとって、こういうのが当たっているんだとか、歌詞、メロディー、アレンジ、それぞれ自分なりに分解して」
ヒット曲を腑(ふ)分けし、共通するキモをかっこにくるみ、という行き方だ。いいとこ取りの模倣に終わってしまいそうだが、そうはならなかった。あるとき目にしたビートルズのメンバーのインタビュー記事が、その方向で間違いない、と示唆していた。
「ビートルズも最初は、(憧れの)エルビス・プレスリーみたいなロックンロールをやりたいと思い、一生懸命作るわけです。でも、やれどもやれどもエルビスみたいなサウンドは出せず、そういう曲も作れない。だけど、結果どうなったか。エルビスになれなかったビートルズはビートルズになっていった。コピーがうまくできなかったからこそ、オリジナルになった、と」
模倣できずにはみ出す個性、磨き上げて高みを目指す
人は完全に人をコピーできない。模倣できず、元の作品からはみ出す部分が出てくれば、それが個性かもしれない。そこを究めていけば――。ビートルズという存在と自分を同一線上に並べるわけではない、と前置きしつつ「バカボンのパパじゃないけれど、これでいいのだ、と思いましたね」
オリジナルであることの難しさを知ればこそ、芸術の根幹と思われている「自己表現」に対して距離を置く。「自分を表現するって、相当難易度が高いですから」。先立つものは方法論や技術であり、ただただ自分の感情をぶつけよう、では足りない。「野球をしたことがないのにホームランを打ちたい、といっているようなもので」
方法論は得ても、それだけで作品はできない。最後は自分と向き合う、という坂が待っている。
「ソングライティングで言葉を紡ぎだし、感動を与えようとか、人に何か感じてもらいたいと思うなら、自分が発した言葉に責任を持たなければいけないと思う。その責任とは何かというと、本当の自分自身とちゃんと向き合ったか、です。一言一句、全部が全部、本心じゃなくていいんですけれども、あ、この1行って、この人の本当のことを言っているな、というその1行があれば……」
人の心を動かす言葉というものがあるなら、それは自己の心の真実を語る1行、1行でしかない。しかし、自分の深奥に分け入り、本当の言葉を拾ってこようとするとき、どんな顔が出てくるかはわからない。
人は性善、性悪、どちらでもあり、自分も例外ではない。「いい人でありたいとは思っているけれど、めちゃくちゃいい人かといったら、僕はそうじゃなくて、嫌な部分もいっぱいあるし」。セルフカウンセリングとも呼ぶその作業には入ったまま、戻れなくなりそうな怖さがあるという。
「愛と知っていたのに 春はやってくるのに……」(「桜坂」)。シンプルでピュアな言葉たちが、そこまでの力を持つわけの一端を知る。
【My Charge】週1トレーニング充実5時間、ベンチプレスで110キロ挙げる
分刻みのスケジュールのなか、心安らぐ時間はあるのだろうか。
「トレーニングをしたあとは、心身ともにすっきりしますね」。週に一度、ジムに通い、前後1時間のマッサージなどを含めて5時間、みっちり鍛える。
ベンチプレスでは110キロを持ち上げる。軽いところから始めて、ここまでくるのに20年ほどかかったという。1990年代後半の格闘技ブームのなか、「プライド」の選手たちが「なんか格好いい体をしているな」と思ったのがきっかけ。
ウエートトレーニングの良さは成果が数字に出ることだ。「当然、人間は年を取るので、昔、速かった足が遅くなったというのはあると思うけれど、筋肉の量は年を取ってもトレーニングをやればやるだけ増やせる。一応の目標を120キロに設定していて、頑張ればもっといけると思う。若かったころの自分より、今の方が重たいのが挙げられている。つまり若いころのオレより、今のオレの方が強い、ということが納得できるわけです」
個展も開く写真など、多趣味で知られる。ギターの収集でも有名だ。いずれの分野でもプロ級、一級の専門家になり、すぐ仕事との境目がなくなる。そのなかでは最も「業」から遠く、ほっとする時間というトレーニングだが「いつでも3時間のステージ(上の写真はアミューズ提供)ができる体を維持しておく」という効果ももちろんある。
ステージに出た瞬間の立ち姿にオーラがある、と人は言う。そのオーラもただの雰囲気やら、いわゆる「顔」から発せられるものではなく、筋肉という裏付けがあってこそのようだ。理詰めの人らしいところかもしれない。
腹背筋、臀部(でんぶ)、脚周りの大きな筋肉とともに、意識しているのが声帯を動かす筋肉だという。「年を取ってしわがれ声になるのは(2枚合わさった)声帯が痩せて、間が開いてくるから、というんですけど、声帯を動かす筋肉はよくしゃべったり、歌ったりして動かし続ければ維持できるらしい」
ライフワークとなった感のあるラジオのパーソナリティーも、それが決して目的ではないけれど、結果として声帯の筋肉保持につながっている。「関心があるものに正直でありたい」と、心の赴くところに全力投球し、その充足感がまた炉心に投入され……。永久機関のごとき無尽のエネルギーの源がうかがえるようだ。
篠山正幸
山口朋秀撮影
【NIKKEI The STYLE 2023年12月17日付「My Story」】
ミュージシャン、俳優、写真家……。デビュー以来30年あまり、多彩な顔を持ち、時代を代表するアーティストとして福山雅治さんは疾走してきた。心を動かす言葉と旋律は純粋であるばかりではない自己と厳しく向き合うことによって、紡がれているらしい。
長崎から、音楽活動のために上京した18歳当時を、苦笑まじりに振り返る。
「(高校を出て)5カ月間就職したけれど『井の中の蛙(かわず)大海を知らず』のままで10代、20代を過ごすのも嫌だな、と。ロックバンドを組みたくて考えたのが、新宿のピザ屋さんのアルバイト。35年くらい前、ピザのデリバリーがはやっていて、最先端のアルバイト先なら、文化的に感度の高いやつが集まって来るはずだ、と思って」
感受性が強く、音楽活動に興味を持つ仲間もいるにはいたが、結局はみんな夢だけ、みたいな素人の甘さがあり「ハモれなかった」。うだつのあがらない日々の転機は、芸能事務所アミューズの映画俳優オーディションに合格したことだった。この時の「偶然」が、すでに伝説の一つとなっている。
「偶然」と「好意」が重なり、映画俳優への道を開く
最終面接の通知が、手違いで東京都昭島市のアパートに届かず、落ちたと思い、ドライブにでかけた。ところが車のマフラーが腐食していたらしく、横田基地の辺りではずれて爆音になった。「こりゃいかんと、マフラーを拾ってアパートに戻り、車の下にもぐっていたところに、自転車に乗った配達の方が、電報届いていますよ、とやってきたわけです」。今すぐ来て、という事務所からの連絡だった。
当時9万5千円で買った中古の「いすゞジェミニZZ/R」のマフラーが、もし落ちていなかったら……。
「『タラレバ』でいえば、いろんなことはあったでしょう。今とは違う仕事をしていた可能性もあるし。でも1回は(音楽活動を)形にしようという頑張りや、あがきはしていたはず」
運、不運にかかわらず、やがては芽吹くはずの才能だったのだろうが、周囲の好意が、希代のアーティスト誕生にあずかっていたのは確からしい。
ピザ屋を辞めた後に勤めた材木店の家族は、ご飯を食べさせ、風呂に入れてくれ、クリスマスのケーキを持たせてくれた。アミューズの担当者は、審査に来ない青年に電報を出して呼び寄せた。とにかく人にかわいがられる。
「(かわいがられる)才能やすべがあったかどうかは、当時も今もよくわからないけれど、人にかわいがられたい、とは思っているし、そう思うことは大事なんじゃないか、と。老若男女問わず、好かれるって嫌な気持ちはしません。だから僕のなかでも、好きになってもらいたかったら(自分が)まず好きになること、と決めているところがある」
オーディションに合格してからの活躍は周知の通りだが、作った歌がすぐに売れたわけではなかった。
「とにかくヒットしている楽曲を、自分なりに因数分解してみました。自分が好きかどうかとか、自分はこの曲しかやりたくないとか、自分から出てくる音楽はこれだとか、自分らしさとはこうだ、とかは全部二の次にして、ヒットチャートに入っている楽曲のコードをとって、こういうのが当たっているんだとか、歌詞、メロディー、アレンジ、それぞれ自分なりに分解して」
ヒット曲を腑(ふ)分けし、共通するキモをかっこにくるみ、という行き方だ。いいとこ取りの模倣に終わってしまいそうだが、そうはならなかった。あるとき目にしたビートルズのメンバーのインタビュー記事が、その方向で間違いない、と示唆していた。
「ビートルズも最初は、(憧れの)エルビス・プレスリーみたいなロックンロールをやりたいと思い、一生懸命作るわけです。でも、やれどもやれどもエルビスみたいなサウンドは出せず、そういう曲も作れない。だけど、結果どうなったか。エルビスになれなかったビートルズはビートルズになっていった。コピーがうまくできなかったからこそ、オリジナルになった、と」
模倣できずにはみ出す個性、磨き上げて高みを目指す
人は完全に人をコピーできない。模倣できず、元の作品からはみ出す部分が出てくれば、それが個性かもしれない。そこを究めていけば――。ビートルズという存在と自分を同一線上に並べるわけではない、と前置きしつつ「バカボンのパパじゃないけれど、これでいいのだ、と思いましたね」
オリジナルであることの難しさを知ればこそ、芸術の根幹と思われている「自己表現」に対して距離を置く。「自分を表現するって、相当難易度が高いですから」。先立つものは方法論や技術であり、ただただ自分の感情をぶつけよう、では足りない。「野球をしたことがないのにホームランを打ちたい、といっているようなもので」
方法論は得ても、それだけで作品はできない。最後は自分と向き合う、という坂が待っている。
「ソングライティングで言葉を紡ぎだし、感動を与えようとか、人に何か感じてもらいたいと思うなら、自分が発した言葉に責任を持たなければいけないと思う。その責任とは何かというと、本当の自分自身とちゃんと向き合ったか、です。一言一句、全部が全部、本心じゃなくていいんですけれども、あ、この1行って、この人の本当のことを言っているな、というその1行があれば……」
人の心を動かす言葉というものがあるなら、それは自己の心の真実を語る1行、1行でしかない。しかし、自分の深奥に分け入り、本当の言葉を拾ってこようとするとき、どんな顔が出てくるかはわからない。
人は性善、性悪、どちらでもあり、自分も例外ではない。「いい人でありたいとは思っているけれど、めちゃくちゃいい人かといったら、僕はそうじゃなくて、嫌な部分もいっぱいあるし」。セルフカウンセリングとも呼ぶその作業には入ったまま、戻れなくなりそうな怖さがあるという。
「愛と知っていたのに 春はやってくるのに……」(「桜坂」)。シンプルでピュアな言葉たちが、そこまでの力を持つわけの一端を知る。
【My Charge】週1トレーニング充実5時間、ベンチプレスで110キロ挙げる
分刻みのスケジュールのなか、心安らぐ時間はあるのだろうか。
「トレーニングをしたあとは、心身ともにすっきりしますね」。週に一度、ジムに通い、前後1時間のマッサージなどを含めて5時間、みっちり鍛える。
ベンチプレスでは110キロを持ち上げる。軽いところから始めて、ここまでくるのに20年ほどかかったという。1990年代後半の格闘技ブームのなか、「プライド」の選手たちが「なんか格好いい体をしているな」と思ったのがきっかけ。
ウエートトレーニングの良さは成果が数字に出ることだ。「当然、人間は年を取るので、昔、速かった足が遅くなったというのはあると思うけれど、筋肉の量は年を取ってもトレーニングをやればやるだけ増やせる。一応の目標を120キロに設定していて、頑張ればもっといけると思う。若かったころの自分より、今の方が重たいのが挙げられている。つまり若いころのオレより、今のオレの方が強い、ということが納得できるわけです」
個展も開く写真など、多趣味で知られる。ギターの収集でも有名だ。いずれの分野でもプロ級、一級の専門家になり、すぐ仕事との境目がなくなる。そのなかでは最も「業」から遠く、ほっとする時間というトレーニングだが「いつでも3時間のステージ(上の写真はアミューズ提供)ができる体を維持しておく」という効果ももちろんある。
ステージに出た瞬間の立ち姿にオーラがある、と人は言う。そのオーラもただの雰囲気やら、いわゆる「顔」から発せられるものではなく、筋肉という裏付けがあってこそのようだ。理詰めの人らしいところかもしれない。
腹背筋、臀部(でんぶ)、脚周りの大きな筋肉とともに、意識しているのが声帯を動かす筋肉だという。「年を取ってしわがれ声になるのは(2枚合わさった)声帯が痩せて、間が開いてくるから、というんですけど、声帯を動かす筋肉はよくしゃべったり、歌ったりして動かし続ければ維持できるらしい」
ライフワークとなった感のあるラジオのパーソナリティーも、それが決して目的ではないけれど、結果として声帯の筋肉保持につながっている。「関心があるものに正直でありたい」と、心の赴くところに全力投球し、その充足感がまた炉心に投入され……。永久機関のごとき無尽のエネルギーの源がうかがえるようだ。
篠山正幸
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【NIKKEI The STYLE 2023年12月17日付「My Story」】
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